Being a Radiologist
医療制度の大きな変革の中で、医療の現場での「医師像」も大きく変わってきています。患者さんに質の高い医療を提供することを考えれば、今までの「お医者様」では満足の得られる医療はできません。各分野の専門医が適切な診断・治療方針を協議し、決定していくことが望まれます。画像診断の専門家である画像診断医、そして悪性腫瘍治療の専門家である放射線治療医はその中で大切な役割を果たしています。
画像診断医
画像診断医(Diagnostic Radiologist) という言葉が頻繁に使われるようになってきています。従来は放射線科医という言葉で、画像診断をしたり、放射線治療をしたりする医師をすべて含んでいました。しかし、内視鏡やMRI 装置などX 線を使わない診断分野も増えてきていることから、画像診断をもっぱらに行う放射線科医を画像診断医と呼ぶようになっています。画像診断医の中にも、General Radiologist という「頭のてっぺんから、足の先まで」の画像診断を行う医師(大半の放射線科医) やNeuroradiologist という中枢神経の画像診断に特化している医師もいます。画像診断を主な仕事とする医師(画像診断専門医)は病院内で画像診断報告書の作成を主な仕事とし、現行の保険制度では通常の画像診断料(4,500円)に加えて、CT・MRI検査1 件あたり870円、胸部単純写真1 件あたり580円が加算されます。正確な診断のためにも、病院経営のためにも、画像診断医の需要は伸びるばかりです。
画像診断の専門家
画像診断の専門家である画像診断医の需要は近年急速に高まっています。この傾向は日本だけでなく、欧米でも同様です。Evidence-based Medicine(EBM)という言葉をご存じの方も多いでしょう。最適な治療を行うためには、確かな診断が必要です。画像診断で得られるたくさんの情報を正しく理解して治療に役立てる医師が必要なのです。
診断と治療
患者さんと向き合って診断や治療を行う放射線科医がいます。患者さんの状態を思い浮かべながら、フィルムやモニタに向かって診断を行う放射線科医がいます。どちらのスタイルも立派な放射線科医であり、その目的に違いはありません。患者さんの満足の得られる質の高い医療を提供するのが、我々の使命です。何よりも正確な診断をすることが、最適な治療に直結しています。
低侵襲で高度な治療
外科医の世界でもおなかを大きく開くような侵襲の大きな手術をすることが減ってきています。放射線科医の世界では、以前より画像診断の技術を利用した低侵襲な治療がなされてきました。Interventional Radiology(IVR)や新しい放射線照射技術によるがん治療などは外科医の手術に匹敵する治療成績を納めています。患者さんの選択肢を広げる意味でもこれら「患者に優しい」治療の普及が必要です。
医師自身のQOL
今まではタブー視されていた医師自身のQOL。女性の医師も増えています。しかし、出産などをきっかけに医師としての仕事を続けられない先生方がたくさんいらっしゃいます。放射線科医は自分で自分にあった仕事を選ぶことができます。小さな子供のいる女性にも無理のない仕事がたくさんあり、家庭の仕事をしながら、社会への貢献ができます。仕事と家庭のどちらにいる自分も自分らしく生きることが大切なことです。
コラム
日本には全世界の三分の一のCTが存在すると言われています。これは日本人にとってはすぐに検査ができるという意味で、非常に幸せなことです。イギリスのようにCT検査に4、5ヶ月以上待たされてしまい、治療を開始するまでの期間が非常に長くなってしまうことを考えると夢のようです。しかし、放射線被ばくの問題や得られた画像から十分な情報を引き出せているかと考えた場合、放射線科医不足のため思うようにいかないことも多い現状です。