公益社団法人 日本医学放射線学会

学会案内

歴代理事長挨拶

 

青木 茂樹(令和2年度~令和5年度)

この度、理事長に就任いたしました順天堂大学の青木茂樹です。
放射線科はCTスキャンなどの装置・手法(モダリティー)で規定される数少ない科です。そのため、あらたな手法が出てこないと存在意義が少なくなる、つまり常に走り続けないと存在意義が少なくなる科と考えます。

平成時代は放射線科にとって画期的な技術が矢継ぎ早に出現する夢のような時代でした。CTではヘリカルスキャン、マルチスライスCT、デュアルエナジーCTなど、MRIでは、MRA,EPI法、拡散MRIといった新たな撮像法や解析法の出現、さらには静磁場強度増加や高性能傾斜磁場の導入など、読影環境ではフィルムからPACSへの移行、治療ではIMRT、のように様々な画期的な技術が次々と出現・導入されました。このような技術の進歩の要素として、多量のデジタルデータが扱えるようになったということが挙げられ、かなりの部分がICTの進歩と関連しています。

最近では、画像認識技術等にDeep Learning・人工知能が応用され、急速に進歩しています。大量の視覚データをやっと人の手を介さずともデータとして扱えるようになってきたわけですが、現時点でもすでに新たな領域が形成されつつあることが感じられます。それに対していち早く対応していけば、画像を扱う領域である放射線科の存在意義はさらに増すものと期待しています。

放射線科では専門医機構の基本領域として、すでに機構認定の研修が進んでいます。都市部の専攻医の数には制限が掛かり、欧米に比べまだまだ少ない放射線科医が思うように増えておりませんが、放射線科は基本領域として確立し、シーリングでコントロールが必要と思われるほど認められている科と考えて、学会として医師偏在に対応することが望まれていると思います。

さて、COVID-19の影響で多くの学会、研究会が中止やweb開催となっています。そもそも学会は学術情報の発表・収集とともに同じ分野を極めようという者の交流の場として始まるものと思います。web開催してみるとオンラインでの発表や交流が、かなり可能であることがわかります。このコロナ禍に私が総会会長と理事長となったのも巡り合わせと考え、学会として学会員のwebカンファレンスや研究会をサポートすることを検討したいと考えます。また、今後さらに進むであろう新たな働き方改革にも柔軟な対応が可能な科としての利点を延ばしていきたいと思います。

皆様のお力でこの難局を乗り越えて新たな道を進んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

公益社団法人日本医学放射線学会
理事長 青木 茂樹
(順天堂大学 教授)

 

 

今井 裕(平成30年度~平成31年度)

 日本医学放射線学会は、「放射線科学及びその関連分野に関する学術について研究発表、知識の交換、会員相互及び内外の関連学術団体との連携協力等を行うことにより、これらの分野の進歩・普及・啓発を図るとともに、安全で質の高い医療を提供するための事業活動を通して、国民の健康と福祉の増進に寄与すること」を目的として活動しています。2018年4月より本田 浩 前理事長(九州大学 教授)の後任として、理事長を拝命いたしました東海大学医学部の今井 裕です。青木 茂樹 副理事長(順天堂大学教授)をはじめとする16名の理事と2名の監事の先生方とともに、日本医学放射線学会の発展のために大いに貢献する所存です。本学会は、2018年7月現在で9752名もの学会員数を擁する大きな医学会に成長しています。

 我が国の放射線医学の歴史は、1895年11月8日にドイツの物理学者であるレントゲン教授がX線を発見してから僅か10ヶ月後の1896年(明治29年)に島津 源蔵 氏の手によって日本で最初のX線写真が撮影されています。その後、1913年(大正2年)には、東京と大阪でレントゲンに関連する研究会が発足し、1923年(大正12年)には、「日本レントゲン学会」が創設され、1933年(昭和8年)には、新たに「日本放射線医学会」が発足しました。その後、1940年(昭和15年)には、「日本レントゲン学会」と「日本放射線医学会」が統一され、「日本医学放射線学会」が設立され、翌年4月に第1回日本医学放射線学会総会が、初代会長 真鍋 嘉一郎 先生のもとで開催されています。その際の特別講演は、1949年(昭和24年)に日本人として初めてノーベル賞を受賞された湯川 秀樹 先生による「放射線と物質」でありました。

 現在の日本医学放射線学会では、2016年6月よりJapan Safe Radiologyアドホック委員会を設置し、今後の放射線医療の質や安全性を確保するための種々の施策を検討しています。検討項目としては、①医療機器や放射線専門医の適正配置、②装置メンテナンスの安全管理、③Choosing Wiselyを含めた機器の適正使用、④診断参考レベル(DRL)をはじめとする被ばく管理、⑤画像バイオマーカーの開発と検査の標準化のためのQIBA(quantitative imaging biomarker alliance)の取り組み、さらに⑥報告書の質保証などが挙げられます。そのために画像医療情報におけるビッグデータを全国規模で集積した画像診断ナショナルデータベース(Japan Medical Image Database: J-MID)の構築を目指し、人工知能も活用して医療現場におけるQuality Controlに活用できるシステムの構築を考えています。

 また、日本医学放射線学会の専門医制度は、日本専門医機構の認可する19の基本領域の一つとなっており、現在はサブスペシャリティとして、放射線診断専門と放射線治療専門医を構築する作業を行っています。この他にも、多くの課題が山積していますが、学会の皆さまと一緒に、我が国における放射線医学ならびに医療の発展に向けて進みたいと思います。ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

公益社団法人日本医学放射線学会
理事長 今井 裕
(東海大学 教授・副学長)