公益社団法人 日本医学放射線学会

会員の皆様へ

安全に関する情報

X線管球落下事故報告

 (1)事実経過
2003年3月26日午前 に某大学附属病院放射線部において、膝蓋骨単純エックス線撮影sun rise view撮影を目的として、位置決めのために撮影用管球を背臥位患者の胸部上方に移動中、管球が突然落下。担当技師が落下管球を手で支えながら救援を要 請、管球と検査台にはさまれた状態の患者を脱出させた。胸部打撲の程度は軽度であったが、心理的衝撃はかなり大きかったと推測される。
依頼の整形 外科医に連絡、事実経過について説明し、その後、もとの主治医グループである脳外科に連絡されたが、患者自身の衝撃強く、夜になっての主治医の訪問にもう いいからとだけの対応であった。その後、患者、患者の家族に対する情報提供が不十分であった。事故調査後約2週目に公式な、患者、患者の家族に対する情報 提供と謝罪を行った。

(2)事故調査結果
撮影装置は1987年以来約16年間使用されている が、納入以後メーカーによる保守点検は行なわれていない。事故後メーカーの調査により、管球の重さは支柱を含めて40kgであることがわかった。該当する 装置は生産停止よりすでに5年以上経過し、メーカーによるサポート期間を過ぎている。支柱内で管球を固定する可動式板バネが破断しており、落下時に作動す べき制動用の爪が固まったグリスにより作動しなかったことが原因とされた。

(3)具体的対応
装置を使用停止とし、放射線部内にある他の老朽装置について、各メーカーへ点検を依頼した。放射線部日常業務点検の徹底化を指示し、事故防止マニュアルを改訂予定とした。
患者に対する説明がやや不足したこと、事故原因が明らかになるのを待ったために正式な説明対応が遅れたことは反省材料であった。
学会や放射線機器工業会における現在までの放射線機器点検についての指標、対策について調査し、同時に、附属病院リスクマネージメント委員会へ事故報告し、徐細動器を含むすべての病院内の老朽化機器についての点検の必要性について提言した。
学会メールマガジンへ事例報告した。

(4)今後の課題
被害を直接受けられた患者様の救済を最優先とし、迅速、かつ、十分な経過説明が必要と考えられた。
病院内老朽化機器の点検は予算上の制約などから実際に行われていない現状がある。まず、これらの存在を具体的に把握し、院内での点検費用の予算化が必要。順次、古い機器については、更新、あるいは廃棄しなければならないであろう。